日本ベトナム友好協会大阪府連合会

6. 憲法9条はベトナム人に理解できるか?

  日本国内の改憲の動きやその背景にあるアメリカの圧力に対抗して、憲法9条を世界に広めようという運動がおこなわれています。ただし、背景をきちんと説明せずに9条の条文だけを見せても、「世界では通用しない条文だ」という改憲派の中傷を裏付けることになりかねません。

 ベトナムの例で考えてみましょう。ベトナムは軍事力で独立と統一をかちとった国です。現在のベトナムは軍隊をかなり縮小しましたが、それでも45万人の正規軍(民兵はのぞく)と、おそらく今でも東南アジアでトップクラスの戦力をもっています。
日本の事情をよく知っているインテリは別として、ふつうのベトナム人は、「陸海空軍その他の戦力はこれを保持しない」でいったいどうやって独立を守れるのか、理解できないでしょう。戦争がいかに悲惨かなどと説明しても無駄です。原爆被害は別として、ベトナムは日本より狭い国土に、第二次世界大戦中に世界中で使われた量よりもっと多くの砲爆弾をぶち込まれた国です。沖縄戦のようなことが、そこらじゅうでおこなわれた国です。悲惨な戦争体験は、すぐ軍備放棄にはつながらないのです。080103-14.jpg

 日本が軍隊をもつと、またアジアを侵略しかねないから軍備をもってはいけないのだ、それに今の日本の改憲策動は、アメリカの属国として戦争をするためにおこなわれているのだ、と「正しい説明」をしてみましょう。アメリカから自立する必要については、すぐ同意してくれるでしょう。でも、その先は「かわりに自前の軍備を持つべきだ」とくる人も少なくないでしょう。
ベトナム人も学校で日本の侵略戦争について習ってはいますが、実際の日本軍を覚えている人はもはや少数であるのに対し、中国との戦争と領土紛争のほうが深刻な記憶を残していると思います。その感覚は「北朝鮮に備えて軍備が必要だ」という日本の議論と似ています。ベトナムには、中国の隣国で中国の脅威への対処を最重点課題としない国がありうることを理解できない人が、たくさんいます。要するに、憲法9条を守ろうという人が戦争といえばまずアジア太平洋戦争(第二次世界大戦)を思い出すのに対して、ベトナム人はそうではないのです。

 私はなにも、だから憲法9条は変えるべきだと言ってるわけでも、外国に憲法9条を広めようとしても無駄だと言ってるわけでもありません。今の日本で9条を捨てたら、

1)戦前式の国民弾圧に必ず使われる
2)しかも国家そのものは守れない

という最悪の結果に終わることは、アジアの歴史のプロである私には、ほぼ確実だと思われます。
戦前とくらべても実は、日本人の国際感覚と国際情報能力は、多くの面で落ちています。これではアメリカの手駒としての戦争以外に、自分の主体性をたもってまともな戦争をすることができるとは、とうてい信じられないのです(兵隊と武器がいくらよくても、国際理解と情報能力なしで現代の先進国の戦争はできません)。センター入試で英語のリスニングを出題するだの小学校で英語を勉強させるだの、100年遅れの日本語(国語)教育を放置したままで愚にもつかない議論に血眼になっているようでは、日本人がまともに英語が使え、言葉以外でも国際感覚が身につくようになるまで100年かかるでしょう。変な理屈ですが、だから憲法9条を守らないと、日本は滅びるのです。

 ついでに脱線すれば、憲法9条攻撃に「こういう日本だけしかない規定は無理だ」というのがありますね。でも、天皇制が1000年以上続いたなんて、日本以外のどこにあるでしょう。こんなすさまじい土建屋政治をしている国も、ほかのどこにあるでしょう。悪い面だけではありません。家電製品で、こんなに細かい使い勝手にこだわる国民が世界のどこにいるでしょう。そう、アジア諸地域とたくさんの共通性があるにしても、日本がかなり特殊な国であることは事実なのです。憲法9条だって、日本だからだめだとは言えません。
でもやはり、世界の理解なしに憲法9条は守れないでしょう。ではどうしたら、ベトナム人ならベトナム人に憲法9条が理解してもらえるか、私も実は「こうすれば100%OK」という正解をもっているわけではありません。皆さんもいっしょに考えてみませんか。