日本ベトナム友好協会大阪府連合会

5.ベトナムの物価はなぜ安いのか?

 ベトナムへ行くと物価が安いのでうれしいですよね。でも、なぜあんなに安いのでしょう。しかも、不動産のように投機で値上がりしているものだけでなくて、ベトナム国内の物価全体がどんどん上がっているのに、われわれ外国人が旅行した際の費用はそれほど上がらないのはなぜでしょう。また理屈っぽい話をがまんしてもらいましょう。

 ベトナムの物価が安いというのは、日本のハイテクで作った製品よりベトナムの低級な品物が安いというだけでなく、同じ技術水準で供給されるモノやサービスでも、日本よりはるかに安く手に入るということですよね。そうなる理由は2つあります。

 第一は、農業で食べている人が多いことがカギになります。農民はふつう、自分で食べる食料のかなりの部分を自分で生産していますから、生きるために必要なお金というものが、都市住民や工場労働者より少なくていいのです。農民の子どもが労働者になった場合も、家族全員が労働者である場合とくらべて、賃金は安くていいのです。こうして、農業国では商工業が発達した国とくらべて必要な通貨や賃金が少ないために、物価が安くなるのが自然なのです。だから日本の50分の1ぐらいの所得水準でも、ベトナム人はなんとか暮らしていけるわけです。071227-29.jpg

 ところが、国内では合理的なこのしくみが、国際関係では農業国に不利にはたらきます。工業国と農業国が貿易をすると、お金がたくさんある工業国の製品は相対的に高くなり、農業国の側から見ると、高い工業製品を買って安い農産物を売ることになってしまうのです。これは工業国が不正をしているわけではなくて、経済法則には合っているのです。資本主義の本当に恐ろしいところは、なにも暴力や権力を使わなくても、法則通りに取引をしていっぽうが得をすることでしょう。そしてベトナムよりずっと現金収入の多い日本のわれわれは、ベトナム人にはバカ高い食事でも「安い安い」と楽しむことができるいっぽうで、来日したベトナム人はインスタントラーメンばかり食べて暮らすことになったりするのです。

 第二にしかし、日本とベトナムをくらべる際には、為替レートの問題を考えねばなりません。1ドル=1万6千ドンあまりという現在のレートは、「公正な」ものでしょうか? 円とドルの交換レートや、中国の人民元の問題に詳しい方はご存じの通り、そこには複雑な問題があります。
 輸出を増やすには、自国の通貨を切り下げると有利なことはおわかりですね。1ドル100円だったものを120円にすれば、1円の値打ちは100分の1ドルから120分の1ドルに落ちたことになりますが、相手に1ドル分の品物を売った場合には、100円分でなく120円分輸出することができるわけです。逆に日本の自動車の輸出を抑えてGMやクライスラーを儲けさせようとするアメリカ政府は、日本政府に命令して円高にさせればいいわけです。

 071224-52.jpgそこで一般に、輸出で外貨をかせぐのが有利な国の政府は、政策的に自国の通貨を安くしようとします。また安い輸入品を売ってもうけようとする先進国の企業、安い輸入品によって国内の物価や賃金を下げようとする先進国の政府も、これを歓迎します。両方の利害が一致して、発展途上国側の通貨が実際以上に安くなるのです。ただ当然ですが、そのかげには、日本など先進国の農産物が実際以上にバカ高く見えてしまう、工業製品でも多くの国が中国に値段の差で圧倒されてしまうといったマイナス面があります。ベトナムのドンも、明らかに上のような理由で、輸出振興のために、実勢以上に安くされているのです。われわれは「そこにつけ込んで」安い旅行を楽しんでいるのです。

 ではベトナムへ行ったら、モノやサービスを高く買うべきでしょうか。ふっかけられた場合でも値切らずに買えばいいのでしょうか。それで一部の人だけが余分に金を受け取ったら、ベトナム人の間に亀裂を生むかもしれません。また、最初の日本人が言いなりに高値を支払ってしまったために、つぎに行った本当にカネのない人が同じ額を要求されて困ったという話も世界中で聞きますよね。この問題で初級から中級にステップアップするというのは、「どうすればいいか単純な正解はない」ことを理解することだと思います。