日本ベトナム友好協会大阪府連合会/なんでもベトナム・雑学エッセイ6

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第6話 オバマ新大統領はなぜ黒人といえるのか?

 仕事が忙しくてなかなか記事が書けず、どうもすみません。
 新聞で「父は黒人、母は白人で、白人に囲まれて育ったオバマ氏が、どうして黒人といえるのか」という解説を見ました。要するに「本人が自分は黒人だと考えている」「まわりもかれを黒人と見なしている」という主観的な認識以外に、かれを黒人とする客観的理由はないようです。

 人種でもこういうことがあるのだから、文化的なまとまりである民族についてはなおさら、ある人が「なに人(族)」であるのか客観的に定義できない事態が普通に見られます。日系アメリカ人の例を見ても、ある人が「日本人」なのか「アメリカ人」なのかは、言語や生活習慣で確実に線が引けるものではなく、最終的には本人の帰属意識(アイデンティティ)や周囲の認識によります。しかし帰属意識というものは、環境が変わると変化することがあります。

 日本列島の場合、日本人(日本民族)としかいいようのない人が多いのは事実ですが、17世紀に鎖国する前は決してそうではなかったし、現在の日本社会にも、アイヌ系をはじめ在日アジア人、中国残留孤児の引き揚げ者、来日して働く日系ブラジル人など、日本人との「境界線上」で悩む住民が増えていますね。

 そもそも、民族と民族のあいだに客観的で固定的な線が引けるというのは、人種も民族もあまり区別できなかった19世紀の科学水準のもとで生じた誤解で、現在は通用しません。「DNAで日本人のルーツが判明」とかいう記事も見ますが、あれは「マニア向けのエセ科学」であって、科学的に明らかにされているのは、日本民族も中国人(漢民族)も、全然ちがったDNAをもつ複数のグループが含まれているという事実です。


23サパの市場の売り子.BMPサパの市場の売り子前置きが長くなりましたが、社会主義陣営の問題点のひとつに、民族は客観的に区分できるという19世紀的観念を乗り越えられなかったことがあります。ドイモイ後のベトナムがこの問題で揺れ動くありさまを研究しているのが、京都府連会員の伊藤正子さん(京都大学准教授)です。伊藤さんの近著『民族という政治 ベトナム民族分類の歴史と現在』(三元社刊。値段等は大阪府連「本のページ」から京都府連HPに入ってごらんください)は、この問題に正面から取り組んだ力作です。

 ベトナムではもともと多数の民族が入りまじっていますから、もともと民族分類は困難をきわめまし20サパ黒モン族の草笛を吹く子ら.BMPサパ黒モン族の草笛を吹く子らた。しかも社会主義国の民族分類は、さまざまな政治的・社会的権利に結びついています。
 そこで、現在のように一定の自主性が認められ、しかも市場経済下での生存競争にさらされた状態では、より有利なまとまり方を求めて他民族との統合を要求したり、逆にある民族内部の対立で少数派が分離を要求する、はては個人レベルでご都合主義的に帰属を変更するなどの事態が、いくらでもおこりうるのです。そのなかには「どう見ても不自然だ」というものもあれば、「どちらの主張が正しいとも決しがたい」場合もあるでしょう。

 ベトナム政府は比較的柔軟な政策をとっているため、中国ほどの大騒ぎにはなっていませんが、民主主義や愛国心があればあつれきが防げるなどと考えるのは、お気楽すぎるところがあります。民族や国境を絶対視するかぎりはかならず対立がおこり、民主主義はじゅうぶん機能できない、といういいかたもできるでしょう。伊藤さんの著者を読んで、みなさんもこの問題を考えてみませんか。

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