日本ベトナム友好協会大阪府連合会

 

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第7話 ベトナムにはいくつの少数民族が住んでいる?

 ベトナムの総人口の90%近くがキン族(ベト族)ですが、ほかにいろいろな少数民族が住んでいることは、皆さんご存じのとおりです。かつて日本に来たベトナム難民のなかにも少数民族がまじっていましたし、ダラットやサパなど少数民族地域の有名観光地もありますね。ベトナム共産党書記長のノン・ドゥク・マインさんも、中越国境に近いカオバン省出身のタイ族で、初の少数民族出身の書記長として話題になりました。
 
 以前はベトナムの民族を60種類といっていましたが、現在はキン族をあわせて54種類の民族が住むというのが公式の表現で、「ベトナム民族(国民の意味)の大家族」などといいます。ハノイの民族学博物館などで、各民族についての展示や写真を見ることができますね。VTV-5というテレビのチャンネルをつけると、少数民族語の放送が見られます。
 
 南中国~東南アジアに住む少数民族の多くは「山地民」です。ベトナムでは、北部から順に見ると(第2話の地方の分け方を思い出してください)、東北地方ではタイ系のタイ族(カタカナはつぎのターイ族と区別するため、タイー族と書くこともあります)、ヌン族など谷間・盆地で水田稲作をいとなむひとびとと、モン(ミャオ)族、ザオ(ヤオ)族など高地で最近まで焼き畑をしていたひとびとが、おもな住人です。いずれも中国文化の影響がつよく、伝統的には漢字を使ってきました。
 
 西北地方では、タイ系でもタイ・ラオスに近いタイ族(カタカナでターイ族とも書く。黒タイ、白タイなどをふくむ)、ラオ族などが、やはり水田稲作をしています。こちらの文字はインド系、ただしタイ・ラオスの「上座仏教」はほとんど入っていません。高地にはモン族、ザオ族などさまざまな焼き畑民が住んでいます。
 
 もうひとつ北部で忘れていけないのは、北部平野周辺の丘陵部に、しばしばタイ系民族と混在している「ムオン族」です。ムオン族はキン族ともとは同グループで、漢字文化ももっていますが、平野のキン族がどんどん変化したのに対し、古い言語や文化を保存しているといわれます(ただしタイ族の影響もある)。
 
 中部では、ラオス国境のチュオンソン山脈、その南方のタイグエン(中部高原)などが、モン・クメール(オーストロネシア)系、マラヨ・ポリネシア(オーストロネシア)系など少数民族の別天地として知られています(いまはどこの山地もキン族の移民が多数派ですが)。チュオンソン山脈のカトゥ族、タイグエンのバナ(バナール)族・セダン族はモン・クメール系、タイグエンのジャライ族、エデ族や南中部のラグライ族はマラヨ・ポリネシア系です。かつてはほとんど文字をもたず、焼き畑農業や森林産物の採集で生活していました。
 いっぽう、中南部にはチャム族、メコンデルタにはクメール族という、平地の少数民族が住んでいますね。どちらも、古くから水田農業をしていました。チャム族は東ひがし南部のタイニン省やメコンデルタのアンザン省にもまとまって住んでいます。ベトナム王朝の南下で、チャンパやカンボジアなどの王国が衰退した結果、チャム族やクメール族は少数民族に転落してしまったわけです。
 

ハニ族の集落 .JPG
ベトナム001.jpg
20サパ黒モン族の草笛を吹く子ら.BMP

 最後に、中国系の「ホア族」(日本語では華人、華僑)のことにふれないわけにはいきません。ホア族は全国に住んでいますが、とくに南部が多いですね。生業もいろいろですが、とくに商業・流通に強く、ホーチミン市のチョロンは、東南アジア有数のチャイナタウンとしておおきな経済力をもっています。中国人(漢民族)といってもいろいろな方言グループに分かれていますが、ベトナムでは広東(カントン)語が主流のようです。
 
 ところでベトナムでは、少数民族に学校の入学枠、地方議員の議席枠など、制度上または慣習上の優遇のしくみがいろいろあります。キン族に対する2人っ子政策も、少数民族は対象外です。ただし少数民族を「遅れている」と見る差別意識は根強く(少数民族だけを「民族の人」とよびます。キン族は民族ではない?)、かつては民族文化を捨ててキン族に強制的に同化させる政策もおこなわれました。サイクルさえ守れば森林を維持できる焼き畑を、環境破壊の元凶として一方的に敵視し禁止したかつての「定住定耕」政策も、背景に少数民族蔑視があったと思われます(実際は平地から移住したキン族が、山地の生態を知らずに無秩序な開発をおこなってひきおこした森林破壊のほうが深刻なので、国際的批判も受けて現在では是正がはかられている)。
 
 現在では少数民族政策の改善がはかられ、少数民族のことばによる学校教育など、かなりの自主性が認められていますが、それがかえって「おなじ少数民族でも、どの方言で教育するのか」をめぐる争いをまねいたり、「自分たちは○○族と分類されてきたが、ちがいがあるので分離したい」という要求がでるなど、いろいろな問題が生じています。
 
 古代から一貫して移住や混血、文化の混合がさかんな東南アジアでは、特定の民族に分けられない住民がたくさんいます。世界の民族学や人類学では、「いくら科学的に研究しても、完璧な民族分類は不可能だ」という見方が常識です。ベトナム政府はそこまで言ってはいませんが、ベトナムの民族分類もやはり暫定的なもので、どこまで行っても「この分類ですべて解決」とはならないでしょう。
 
 日本人は一般にこういう問題にひどく鈍感ですが、「日系アメリカ人はどこまで日本人でどこからアメリカ人なのか」という問題を思い出してもらえば、想像はつくかと思います。
 

次回予告:「ベトナム人は仏教徒?」 お楽しみに。

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